Excerpt for JAPAN THAT DISAPPEARS FROM THE WORLD ATLAS by Masakazu Shima, available in its entirety at Smashwords

Japan that Disappears from the World Atlas

(Sekai Chizu Kara Kieru Nippon)


Masakazu Shima





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世界地図から消える日本

世界で広がる自由貿易協定(FTA)が日本企業と日本人に与える影響















株式会社ロジスティック


嶋  正 和

はじめに


皆さんにとって自由貿易協定(FTA)という言葉は馴染みがありますか?最近は新聞でよく取り上げられていますね。日本では経済連携協定(EPAと言われています。新聞でよく見かけることになっていても、皆さんが身近に感じることは少ないのではないかと思います。外交の世界の問題で、関係の無いような気分でいたのではないでしょうか。私もその口です。私は経営コンサルティングを20年以上やっていますが、FTAを知ったのはお恥ずかしい話、2006年にお客様から教えてもらってからです。それまでは皆さんと同じように新聞に記事が載っていても読み流していました。


知るきっかけとなった仕事は次のようなものです。お客様に「全世界の部品生産拠点、商品の生産拠点、そして販売拠点(本当に全世界)をどのような物流体制で供給すればいいのか」という大きな命題のコンサルティングのお仕事をもらったのです。コストを最小限にするだけではなく、サービスレベルを維持・向上するにはどうしたらいいかという命題です。その際に、「FTAを含めた関税も大事だと思うから考慮するように」という指示を頂きました。


正直FTAは知りませんでした。コンサルタントは専門知識も大事ですが、客観的に問題を把握し、論理的に問題を解決する能力が大事です。大至急FTAについて調べました。すると、企業運営に大きなインパクトを与えうるものが関税であり、FTAであることがわかったのです。物流コストを減らすことをコンサルティングの業としていた私にとっては正直ショックです。海外物流コストはその商品特性などで一概にこの金額が妥当とは言えません。あえて言えば、売価の2~5%くらいではないでしょうか。その物流コストの10%を一生懸命削るのが当社の仕事。10%削減できれば売価の0.2~0.5%の利益率が向上しますね。決して小さくないコスト削減になります。


関税はCIF運賃保険料込み条件:運賃や船荷保険料を上乗せ)価格に対してかかる関税で、輸入したときに税関で払う税金です。その関税は国と商品によって違います。無税の場合もありますが数%から場合によって50~60%といった高い関税率もあります。100円の価値のある物が、60%関税がかかった場合、税関を通り過ぎれば100円+60円=160円になるのです。輸入品の値段が高いのはそういう理由です。しかし、その関税がFTAによってゼロになったりします。輸入する人はFTAを活用することで関税分60円を払わなくてもよくなります。例えば物流費が5%の5円とすると、10%削減しても0.5円のコスト削減。FTA活用は物流コスト削減よりは遥かに大きな「コスト削減」になり得ます。


FTAを勉強していくと、FTAの効用は関税削減効果だけでは終わらないことがよく分かりました。企業はFTAを含めた関税をよく調べて、部材調達、アセンブリ、販売国といったサプライ・チェーンを再構築しないと他国の競合会社に対して競争力を失うこと、逆に企業がFTAを活用すれば日本の工場をわざわざ海外に移転しなくてもいいということなど。企業のみならず日本や地方自治体にとっても、雇用の確保や人材確保上、大変役に立つ協定なのです。


しかし、これだけ重要なものであるにもかかわらず残念なことがあります。こういったことをFTAを推進する日本の政治家が全く知っていないこと、活用することで利益を受ける経済界の経営者が実はその重要性をほとんど理解していないことです。一方、FTAをよく理解し、推進しているEUや韓国などの海外諸国とその企業はそのことを最大限に活用すべく動いています。日本人としてこれらのことを驚異に感じ、何かをしなければならない時期に来ています。放置しておけば、国力は必ず落ちます。FTAがあればいいのではない。FTAがなくてはいけない時代なのです。


図 1 メキシコに輸出する際の関税の例


そういったFTAに関することを理解するのに、私は大変苦労しました。インターネットの時代ではありますが、FTAの全容を理解できるまとまったものは日本にはまったくないのです。この状態ならば、人が理解できないのももっともです。


この本は、経験とその思いから皆さんの自由貿易協定(FTA)理解の一助と積極活用のお手伝いになればと思い書き記しました。FTAは日々進化しています。FTAを理解し、活用されますことを切に願っております。


 次


世界地図から消える日本

世界で広がる自由貿易協定(FTA)が日本企業と日本人に与える影響

はじめに

目 次

第1章 FTAとは何か

1-1 FTAとは何か:国の定義

1-2 FTAはこう理解するとわかりやすい

1-3 FTAのメリット1:マクロ経済としての効果。企業や国民としては感じにくいですが

1-4 FTAのメリット2: 企業にとってのメリット。地方公共団体にとってのメリット

1-5 FTAのメリット3: 投資を呼びこむことができる。韓国のしたたかな戦略を見習え

1-6 FTAのディメリット: 自由競争は「適者生存」。弱い産業は淘汰される?

1-6 地域経済統合のステップ: FTAはその初期段階

2-1 日本のFTA 1: 締結されたFTA

2-2 日本のFTA 2: 交渉中のFTA

2-3 日本のFTA 3: 今後の日本のFTA交渉先としての韓国とEU

2-4 日本のFTA 4: 日本とのFTAを希望する国々

2-5 世界のFTA

2-5 FTAがもたらした世界の構図と世界から除外される日本

第3章 企業にとってのFTAの活用のあり方

3-1 日本の企業とFTA

3-2 FTAを理解するための基礎知識: HSコードとMFN税率 

3-3 FTAによる企業メリット: 関税削減 

3-4 FTAを使わないことのディメリット

3-5 日本の企業はFTAを知らない

第4章 グローバルサプライチェーンへの応用

4-1 FTAマトリックス

4-2 グローバル・サプライ・チェーン: ケーススタディ

4-3 グローバル・サプライ・チェーン: 日本の企業の現状

第5章 FTAが活用するための方法

5-1 活用のプロセス

5-2 特定原産地証明

5-3 原産資格対象とならないもの

5-4 日本への輸入でFTAは生きないのか?

第6章 協定の順守とコンプライアンス、そして企業戦略

6-1 協定の順守

6-2 日本企業が抱える爆弾

6-3 コンプライアンスに対する日本企業の問題意識

6-4 企業意識の低さの理由

6-5 FTAに関する企業マニュアルを作ろう

6-6 本社内にFTAデスクを設けよう

6-7 世界のFTA活用のための布石とその先にあるもの

第7章 農業問題で日本は世界から除外される?

7-1 企業への処方箋

7-2 このまま行けば日本は世界から孤立する

7-3 農業問題を問題のままにしていることが、結果として日本を「鎖国状態」にする

7-4 農業問題は農業問題ではない: 怒れ!野菜農家 

7-5 農業問題は農業問題ではない:その2 農家はFTAに賛成すべき 

7-6 農業問題は農業問題ではない:その3 農家の問題ではなく農協の問題である

7-7 なぜ輸出しない、日本の農作物

7-8 国は「農業を開放するが、強くする」というスキームでの農業の強化策を

第8章 人材問題とFTA

8-1 FTAがもたらす人の移動

8-2 まずは看護師、介護福祉士から日本は始まったが・・・

8-3 FTAで戦々恐々としなければいけないのは実はプロフェッショナル

8-4 経済統合には異文化の受け入れが必要

第9章 日本の採るべき道:国が、地方ができること

9-1 現在起きつつあること

9-2 まずは既存のFTAの活用から1: FTA活用センターの提案

9-3 まずは既存のFTAの活用から2: 特定原産地証明書の発給手数料無料化

9-4 まずは既存のFTAの活用から3: 地方公共団体による支援

9-5 今後のFTA推進のあり方: 農業問題に片をつける

9-6 今後のFTA推進のあり方: 新興国中心の交渉を推進

終わりに

株式会社ロジスティックのFTAサービス

著者:




第1章 FTAとは何か

1-1 FTAとは何か:国の定義

FTAFree Trade Agreementの略称です。日本語に訳すと「自由貿易協定」となります。もっとも、日本ではEPAという言葉が国として使われています。これはEconomic Partnership Agreementの略で「経済連携協定」と呼ばれます。新聞では海外の話はFTA、日本が関係するEPAのどちらかが使われています。ただ、その境界線が最近はかなり曖昧になっていて、メディアは最近あまり区別せずにFTAという言葉を使い始めています。


FTAとEPAの違いは何でしょうか。外務省をはじめとした日本国はFTAとEPAには違いがあるとして、それぞれを定義しています。EPAはFTAよりもより広範囲を包括した概念であるというのが日本国のスタンスです。


自由貿易協定(FTA)は、外務省の定義(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/FTA/policy.html)によれば、


物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とするGATT24条及びGATS(サービス貿易に関する一般協定)第5条にて定義される協定


とあります。他の協定も読まねばなりませんが、FTAの目的とすることは、


  • 関税の撤廃

  • サービスへの外資規制撤廃


を主にしている協定ということです。


一方、経済連携協定(EPAは、これも外務省の定義によれば、FTAより広範囲の内容をカバーしたものとなっています。


FTAの要素を含みつつ、締約国間で経済取引の円滑化、経済制度の調和、協力の促進等市場制度や経済活動の一体化のための取組も含む対象分野の幅広い協定


とあります。目的とすることは、上記の2つに加えて


  • 投資規制撤廃、投資ルールの整備

  • 知的財産制度、競争政策の調和

  • 人的交流の拡大

  • 各分野での協力


を主としています。(図1)

図 2 自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)の違い


日本は「FTAじゃないんだよ、より広範囲のEPAに取り組んでいるんだよ」と言いたい訳ですね。その違いは本当なのでしょうか。例えば、アメリカと韓国とは「米韓FTA」。日本とタイとは「日タイEPA」と呼ばれています。先の定義から考えると、米韓FTAよりも日タイEPAの方が広範囲の高度な協定ということになります。実際は差があるわけではない。また、2009年の衆議院議員選挙で民主党がマニフェストに掲げた「日米FTAの締結」は狭義のFTAを推進して、EPAをやらないと言うことだったんでしょうか。



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